NEDOピッチ

【イベントレポート】【BATTERY JAPAN スタートアップパビリオン】BATTERY JAPAN × NEDO・JOIC 特別展示企画

2026年9月10日、幕張メッセで開催された「Battery Japan秋 第21回 国際二次電池展」。NEDOはオープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)と、「BATTERY JAPAN スタートアップパビリオン~電池開発の未来を拓くNEDO採択スタートアップ特集~」を出展した。特別イベントとして、NEDOのディープテック・スタートアップ支援事業に採択された4社が「NEDOドリームピッチ」に登壇。次世代の電池・エネルギー分野に関心の高い産官学のオーディエンスを前に、未来を支える最先端技術の展望や社会実装に向けた取り組みを披露した。ほぼ満席、立ち見も出るほど関心を集めたピッチの後には、大企業との協業にあたってのスタートアップの本音が漏れるパネルディスカッションを開催。「大企業とスタートアップとが掛け合わさることで可能になる戦い方がある」などと、協業の拡がりに期待をもてる機会となった。

■TeraWatt Technology(株) VP of Strategy 川口 竜太 氏
持続可能な社会のため、全ての製品の電動化を

20数年前、日本の蓄電池産業は世界市場を技術力でリードし市場を席巻した。しかし今や競争力を失い、世界シェアは2%を下回る。そんな日本から産業が失われるかもしれない瀬戸際で気を吐くスタートアップがいる。既存のリチウムイオン電池よりも少し軽く・安く・安全。TeraWatt Technologyは、新たな電池設計に裏付けられた次世代電池の量産に挑む。
「まだ作れないモノだとビジネスにならない。我々はリチウムイオン電池の範疇で、他の電池と『少し』違うモノを量産する」。同社の川口氏が繰り返した「少し」という言葉にはMade in Japanの自信と誇りが見え隠れする。「少し」を捻りだす困難さは想像に難くなく、「少し」の違いが導入製品に大きな自由度をもたらす。同社はまずパウチ型の電池の量産に注力。「安全性も燃える確率を一桁下げられる」(川口氏)と会場に力強く語った。
ロボティクスを駆使した生産技術を確立。日本のエンジニアならではの安定性・精緻なプロセス管理などの経験値に、クラウドベースのデータ収集やAIの活用などのデジタルをかけあわせる。いち早い不具合や異常の検知、根本原因の解決、設計までをも効率的に進める。「日本の電池業界を元気にしたい。コンペティターはいない。皆がコラボレーターだ」(川口氏)。日本の電池産業はまだ世界に価値を届けられる。共にそれを証明する仲間を拡げていく考えだ。

■TopoLogic(株) 事業開発部長 千葉 英誉 氏
常識を覆す新素材×超高速「熱」検知技術で世界市場を切り拓く

リチウムイオン電池の異常な発熱、発火。電池で想定される対処すべきリスクとして、一般にまで認知されている事象だ。いち早く予兆を見つけ防止したいところだが、一般的な温度センサーは熱源によって温められた結果をみる。異常な熱を発し始めた時点で既に問題は起きている。
TopoLogicの千葉氏は「温度は結果を示す指標。我々は(結果に至る)プロセスを見られる」と強調する。同社は独自のセンシング技術によりミリ秒単位の即時性で熱変化を把握できる熱流束センサー「TL-SENSING」を提案する。東京大学の研究成果をもとに開発したこのセンサーは、熱エネルギーの兆候を電気信号としていち早く検知。複雑な構造が求められる方式のため従来は量産が難しかったが、同社独自のトポロジカル材料の活用や、従来とは異なる物理現象を使う新しいアプローチによって、即時検知と小型化・量産を可能にした。小型センサーを機器のあちこちに組み込むことで、多数点のモニタリングや問題発生の予兆把握に使える。
電池のみならず、ガス検知、データセンターの管理監視、産業機器の予兆検知など、幅広い分野への応用を視野に入れる。新しい価値を届けるために、ライセンス供与による共創を呼び掛ける。千葉氏は「みなさんと様々な実証実験をしていき、日本発の技術を世界に提供していきたい」と会場に訴えた。

■(株)LexxPluss 代表取締役CEO 阿蘓 将也 氏
産業機器が自律的に判断し動作する産業インフラを構築する

リチウムイオン電池の開発や量産において微細な誤差は致命的であり、自動化を必須とする産業だ。それでもモジュール組立など人手が必要な部分も残る。他の自動化が進む産業も同様にまだまだ人手が混在し、効率的な生産を実現するうえでのボトルネックだ。そこでLexxPlussは産業特化ヒューマノイド「LexxMoMa」を提案する。代表取締役CEOの阿蘓氏は「ヒト以上の労働力を供給する」と自信を見せる。
ピッチで披露したLexxMoMaの稼働映像にオーディエンスは釘付け。「単腕でも重いモノを素早く扱える」(阿蘓氏)というアームに、同社がこれまで搬送ロボットで培ってきた移動の自由度が加わる。これにより、人のように手足を連動させながら、持つ・運ぶ・作業する、というプロセスを単体でテキパキとこなす。「作業しながら移動する」という人間が備える効率性を実現したうえで、人間よりスピードを高めた。
LexxMoMaは自動車の量産ラインが求める水準のスピードと正確性をクリアする。阿蘓氏は「人がケガをするリスクのある作業でも使える。生産現場で実際に使える産業型ヒューマノイドを展開していく」と力を込めた。

■LiSTie(株)代表取締役 星野 毅 氏
世界中にちらばるリチウムを集める

蓄電池の中核素材として世界的に戦略資源と位置付けられているリチウム。経済安全保障上もその確保が重要テーマだ。しかし資源リサイクルに目を移せば、使用済みリチウムイオン電池や工業廃水などからのリチウム回収の手立てはまだまだ探索中。現在主流の手法は、中間財である炭酸リチウムにしてから水酸化リチウムに生成する。効率的とは言えず、また生成はほぼ中国勢が担っているため自律的な資源確保にはなお課題が残る。
LiSTieは、リチウムのみを通過させるセラミックス製の膜を発明した星野氏が興したスタートアップ。電池の廃棄物などから99.99%の超高純度で水酸化リチウムを回収できる。「水酸化リチウムをダイレクトに作れるのは我々だけ」(星野氏)であり、リサイクル工程の簡素化により低コスト化を実現する。星野氏は「そこにリチウムが含まれるものがあれば、我々の技術ならなんであれ回収できる」と、廃棄物から回収したリチウムを電池メーカーに販売するビジネスモデルを描く。
現在はコンテナ型の1/5の生産量の回収装置を開発中だ。ある事業者の協力を得て、電池関連の廃棄物からのリチウム回収を進める。星野氏は「資源に乏しい日本は海外から買ってきた。この技術を成功させることで、日本の資源問題を資源循環でクリアしていきたい」との想いを会場に伝えた。この手法を用いて、将来的には、核融合エネルギー分野で活用が期待されるリチウム6の濃縮への応用も視野に入れている。

パネルディスカッション「スタートアップが考える、企業協業の本当のところ」

このように各社はそれぞれの強みや目指す世界をアピールし、会場に集まった企業などに協業への期待を伝えた。ただ、オーディエンスにスタートアップとの協業の有無を尋ねたところ、経験があるのはごく少数のみ。そこでパネルディスカッションではNEDOスタートアップ支援部 馬場大輔のファシリテートのもと、「スタートアップが大企業との連携で考える本当のところ」についてインタビュー形式で議論した。協業で見込めるメリットや、取り組みを前進させていくための要点について様々な観点から意見が共有された。

■大企業では難しく、スタートアップだからこそできることとは。

TeraWatt Technology 川口氏「我々のAIシステムは、どの大企業もやろうとしているものの、システムが古かったり個人がデータを抱えたりしていて難しい。我々はレガシーアセットが全くないゼロの状態から作りあげた。これはスタートアップならでは」
TopoLogic 千葉氏「大企業は様々な研究開発テーマを持つ。一方で我々は東大発の研究成果にピン止めして一気に取り組んでいる。事業化に向けて専門的に進められることがスタートアップらしさだ」

■大企業はリスクを許容しにくい面もあるが、スタートアップと協業するうえでの判断軸はどこにあると考えるか。

LexxPluss 阿蘓氏「マーケットが立ち上がる段階は蓋然性が見えにくいが、スタートアップはその頃からリスクをとって取り組んでいる。大企業がそのマーケットに取り組もうとなった時に『今から考える』ではなく、協業によって『既に商品がある』状態を作れる」
LiSTie 星野氏「我々は国立研究開発法人で生まれた技術を使うので、社会課題の解決が事業の大前提にある。だからこそ誰もやれていない/皆が疑問に思っていることに、リスクをとって取り組んでいる。そんな挑戦ができることがスタートアップとの協業の特徴だ」

■大企業との協業やProof of Concept (PoC)を、次のステップにつなげるためにスタートアップ側が期待していることや心掛けていることは。

TopoLogic 千葉氏「研究施設を使わせていただいたり実際の製品でトライしたりと、一緒に取り組んだ結果として価値を生み出すことが重要だ」
LexxPluss 阿蘓氏「大企業側には、シード技術を使ってどう現場に価値創出ができるか検討いただき、そのうえで早い段階で現場との連携をお願いしたい。すると我々としても次のステップに進みやすい」
LiSTie 星野氏「PoCから次に進む際に多くの人員が必要になるが、我々で雇うことは難しい。すなわち大企業の力を借りないと技術を社会に出せないということ。力を得るためにも、我々はビジネスと技術力を示さないといけない」

■大企業とのマッチングで求めているものは。

TeraWatt Technology 川口氏「一番欲しいのは受注。電池業界は4~5年前の活況だった頃は先に受注があったが、今は正反対。大企業そして政府にも期待している」
LexxPluss 阿蘓氏「担当者レベルの将来展望の合意ではなく、『ここまでいけば何台量産しよう』という会社間レベルの大きな合意が欲しい。大企業にとってリスクをとることは難しいことは承知しているが、スタートアップとしては数字を握った方が取り組みやすい」
LiSTie 星野氏「我々はまずビジネスを成立させるために、受注よりも事業連携がほしい。『使い終わったリチウムイオン電池があるので一緒にやりませんか』というような声掛けを欲している」

■NEDOとしてスタートアップにはグローバルに育ってほしいし、日本発の観点から日本企業との協業も推進したい。そこで海外勢との技術差などを、どうアピールしているか。

TeraWatt Technology 川口氏「電池業界では『泥臭い仕事をきっちりやる』ことが不可欠であり、そこは日本の良さとして残っている。だからこそもう一度、日本企業と世界で頑張りたい。日本に足りなかったのはスピードと決断だったが、我々にはそれがある」
TopoLogic 千葉氏「世界からの日本の技術への信頼性は高いが、大企業はスピード感をもって意思決定することは苦手だ。隠れ蓑ではないが、まず我々スタートアップが前に立つことができる。日本のスタートアップ×日本企業だからこそ、世界で通用する戦い方がある」

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